なおし家鍼灸院

なおし家コラム

五十肩の施術法:痛みと可動域について

五十肩の治療は、「痛みの軽減」「可動域の拡大」を目的とします。


A/五十肩の根本治療、固くなっている腱のマヒをとる

五十肩の大元の原因は、腕の奥の腱。腕を支えている筋・腱、腕を動かす最初に使われる筋・腱が固くなってマヒ(拘縮)していること。

ですから、五十肩の根本治療は、固くなっている腱のマヒを取り、ゆるめることです。

麻痺している個所をみつけるには、温熱器をあてて、アチチ反応(※)が出る点を見つけるのがいちばん簡単。アチチ反応が出る点の奥の腱がマヒして固くなっています。

目安としては、肩峰関隙点(結節)、腱板点(肩貞)などです。そのマヒしているところの中心に鍼を入れて、マヒをとっていきます。マヒしている場所まで届くには、長い鍼が必要。あるいはアチチ反応をマヒしているところに注熱してマヒを回復させます。

アチチ反応
温熱器を体表にすべらせると悪い部位 (硬い、冷たい、痛い部分)は特に熱く感じます。 その反応を「アチチ反応」と呼びます。 アチチ反応がでた部位に温熱器を何回か置いてアチチ反応を出し続けていると、 それまでは身をよじるほど熱く感じていたアチチ反応がなくなります。 すると、その部位の硬さ、冷たさ、痛さもなくなっているか軽減しています。 それを続けていると、これまでどんな治療をしても治らなかった病気も治ってゆくのです。

B/急性五十肩の場合は、ねんざと同じように治療をする

腕を動かす筋肉・腱がねんざのときと同じような状態になっています。ねんざは、ねんざした腱が腫れて熱をもち、痛みます。

五十肩の場合は、肩の奥にある上腕二頭筋(力こぶを作る筋肉)や、肩甲骨と腕をつないでいる棘下筋、棘上筋などの筋肉が骨についているところ(硬くて腱になっている)がやられていて、ねんざと同じような状態になっています。

急性で炎症があるとき、すなわち夜間痛や自発痛があるときは、奥の腱が腫れて痛んでいる状態なので、悪いところに直接治療は行わず、反射療法を行います。

五十肩は、奥の腕を支えている腱(肩や肩甲骨についているところ)がかたくなってマヒ(拘縮)した状態が準備期間。それでも負担をかけていると、腕を動かす筋肉がねんざ状態になって損傷してしまい、炎症を起こして腫れ・痛み・熱感が起こります。じっとしていても痛む、夜に痛むときは、炎症がある状態です。

初期のギックリ腰やねんざの治療をするとき、炎症のある場所には直接触れずに、その場所と相関する部位を治療します。ギックリ腰の場合は頭(百会)や胸、ヒザ裏にあるツボを使います。足首ねんざのときには手首のツボを使って反射を起こして遠隔治療を行います。

C/股関節などのツボをつかって反射を起こす

反射とはリフレクソロジーと同じで、悪いところは触らずに、遠隔部位から治療をすることです。その刺激が悪いところに伝わり、悪いところを良くする、東洋医学の療法です。

肩関節と関係するのは股関節です。大転子(大腿部の横、気をつけの姿勢で手が触る骨)の周りの腱、あるいは大腿筋膜張筋の腱を指圧、あるいは鍼・温熱を使って腱反射を起こすと、腕の可動域が改善され、痛みもらくになります。

 

D/肩こり、首コリを治療する

腕の奥の腱がマヒ(拘縮)すると、首・肩こりも生じます。
腕が思うように動かないのだから、当然、腕の付け根にある肩、続いている首もこります。首、肩に温熱器をあてて、アチチ反応のあるところがツボ。アチチ反応があるところに温熱や鍼をして、コリをゆるめるのが手っ取り早い対処法です。

温熱器がないときは、肩のコリに指圧・鍼をして、コリをほぐします。五十肩の場合、首のこりが現われるのは、胸鎖乳突筋、その奥の斜角筋です。すなわち首の横にコリが現われますから、患者さまを横向きにして付着部(エイ風)や肩井付近のコリを緩めます。

肩、首のコリがゆるむと、腕を上げるのが楽になります。最近は、パソコンからくる首、肩のこりが腕にも影響を与えて、五十肩の原因になっているケースも多いようです。

■マヒがとれると症状が変わる!

このようにしてマヒをとると、その場で上がらなかった腕が上がり、回らなかった腕が回り、夜痛くて眠れなかったのが、痛みが取れて眠れるようになります。
治療後、もとに戻ってしまうこともありません。


■温熱器による五十肩の治療

温熱器による治療は、鍼に勝るとも劣らないのではと思えるようになりました。以前は奥のマヒしているコリには、温熱は届かないと思っていたのですが、届かせる方法がわかってきたのです。
温熱器をここに書いてあるツボにあてると、熱くて飛び上がるような「アチチ反応」(前述)が出てきます。身をよじるほどの、熱さというより、鍼で刺すような痛みのある感覚です。

しかし、アチチ反応を何回かだしていると、そのうち身をよじるほど熱かったアチチが軽減していきます。すると、そこに現れていたコリの痛みが軽くなっています。コリが軽くなると、動きや痛みの感じも改善してくるのです。

深部のマヒ(拘縮)しているコリに対して注熱し続けて、そのコリに熱が届くと「アチチ反応」がでて、コリが浮いてきます。そのコリにもう少し注熱しているとコリがゆるんできます。このような治療を何日間か行っていくと奥のマヒがとれていくのがわかってきました。
コリの部分が熱を持って炎症があるときは、温熱をやらないほうが良い場合もありますが、炎症が無い時は、アチチ反応を出すことによって、よくなっていくのも事実です。

温熱器は家庭で、自分でも使うことができます。改善は、少しずつでも毎日行えるので、治療院で行う治療と併用すれば早くよくなります。
ですから治療院で温熱治療をやってもらってどこに「アチチ反応」が出るかがわかったら、その部分を中心にして、自分でも行えば良いのです。
温熱器による五十肩治療は有効です。

温熱器についてはお気軽にお問い合わせください。